《マニュエル伝》インデックス

前に『ジャーゲン註釈集』があるという話をしたが、今日は《マニュエル伝》全体の註釈集である。これもずいぶん参照した。

私の手元にあるのは1977年にマイクロフィルムから複製されたもの。タイプ打ちの原稿をコピーして製本したという感じの造り、もともとは1954年の本のようである。『イヴのことを少し』を訳す垂野創一郎さんが持っている本書の様子は「プヒプヒ日記」で見ることができるが、その姿は私の手元のものとまったく違う。あっちの方がよさそうだな。『土の人形ひとがた』を訳す安野玲さんが持っているのも、きっとこれだ。

まあ、私はこれでいいけど。

タイトルは、A Glossarial Index to the “Biography of the Life of Manuel”で著者はJulius Lawrence Rothman。この著者の学位論文の一部らしい。

こんなところにジャーゲンが! その2『兵士の報酬』

ウィリアム・フォークナー『兵士の報酬』(加島祥造訳/文遊社)を読んでいると92頁で突然「「ぼくはどんな酒の飲み方も一度は試すんです」と彼は言った——ジャーゲンのように」という言葉が出てきて、訳注として「ジェームズ・キャンベルの小説の主人公、享楽追求家」と記されている。享楽追求家? と思いながら、今日は眠いのでこれで。

「月蔭から聞こえる音楽」

1973年に「幻想と怪奇」に載ったキャベルの翻訳作品が「月蔭から聞こえる音楽」(山田修訳)である。これもまた《マニュエル伝》に属する作品。原題はMusic from Behind Moonという。『ジャーゲン』や『イヴのことを少し』に登場して重要な役割を演ずるある登場人物がここにも出てくる。これがあの人かと思いながら読むと楽しいのである。

スペイン語版ジャーゲン

スペインでは2017年にGigamesh社からJurgen, la comedia de la justiciaというタイトルで刊行されている。翻訳の著作権表示を見ると1984, 2017 Marta Pérezとなっているから、1984年にも一度この翻訳で出ていたのだろう。表紙は如何にも発禁本から期待されるような絵になっている。ところで、Jurgenはスペインでは何と読まれているのだろう。

「コリンナについて」

ジェイムズ・ブランチ・キャベルの作品は僅かながら日本語に訳されている。いちばん新しいのは「幽 vol. 19」(2013年)だろう。これもまた《マニュエル伝》に属する作品である。実在の人物が登場して、妖魔に魅入られて異界に引き込まれる話。この連載は毎回著者名が表紙にも目次にも登場しないので、重要な作家の翻訳を見逃しやすいのだ。

これは短篇集The Certain Hourの収録された一篇。読んでいないけれども、面白そうである。あまり評判にはなっていないと思うのだが。下に掲げた本の表紙絵は、Frank C. Papéが描いたものである。これを見て期待してページをぱらぱらと捲ってみたら、中には一枚もイラストがなかった。残念。

ドイツ語版ジャーゲン

『ジャーゲン』は英語圏以外でも広く読まれてきたのだろうかと思うと、そうでもないようである。あまり詳しいことは分からないが、古本屋で買える範囲でかくにんしたところでは、ドイツ語訳は1928年に出ている。これは、Fraktur(所謂、ひげ文字)でちょっと読みにくい。

1981年にはHeyne社からFantasy Classicsの一冊として刊行された。翻訳は上の本とは別である。底本はStorisende版ではないようで、フンコロガシの登場場面などは入っていない。でも、翻訳に際しては、ときどき参考にした。

書影公開

国書刊行会の書籍情報ページで『ジャーゲン』の書影が公開されました。装丁は山田英春さん、装画は木原未沙紀さんです。中にはFrank C. Papéの挿絵がたっぷり入っています。

Amazon.co.jpでも書影が出ています。

国書刊行会

Amazon.co.jp

こういう表紙(カバー)です。

ジャーゲン註釈本

Jurgenには古今東西の神話や民話から夥しい数の人物名地名等が借用されている。あるいは、場面すらも。それを全部拾ってやろうという気持ちを抱きそうになるのは当然だと思うが、それで本を作ってしまった人たちがいる。ここに紹介するのはその一冊(ということは一冊だけではないのだ)である、1928年にニューヨークのRobert M. McBride社から刊行されたNotes on Jurgenである。著者はJames P. Cover。100ページほどしかない短い本だが、とにかく『ジャーゲン』の註釈しかないのである。これがなかったら翻訳は難しかっただろう。このオンライン版が去年まではあったのだが、今はもうない。保存しておけばよかったと後悔している。翌年にはNotes on Figures of Earthも刊行された。この出版社は《マニュエル伝》を多数出版している会社でもある。

マグカップ三兄弟

今回の《マニュエル伝》は三冊連続刊行である。正確にいうとほぼ隔月刊である。翻訳に着手する前に、何か作らなくてはならないと思った。理由は何もない。マグカップを作ろうと思った。もちろん、自分が土から焼く暇はないので、絵を焼き付ける註文をするだけであるが。

『ジャーゲン』『イヴについて少し』『土の人形ひとがた』の三冊に対応したマグカップは以下の写真のようにできあがった。実際に本に載っているパペの絵を使って、それらしい言葉を引用した。非売品である。何かの機会にこっそり配布する企画を思いつくかも知れない。何も思いつかなかったら、世界で10人くらいが手にしただけで終わることになるが、それならそれでいいのだと思う。