短篇版ジャーゲン

Jurgenは1919年の刊行だが、その前の年に短篇版がSmart Set no. 245に掲載されているのである。長篇版の第1章と44〜49章で構成されているのだが、そこだけ読んで面白いのだろうか。

短篇版はリン・カーター編Realms of Wizardry (Doubleday, 1976)で読めるのだが、今調べてみたところ、オリジナルのSmart Setをpdf版で無料でダウンロードできるではないか。Some Lady and Jurgenというタイトルである。 Smart Setリンク先

あと、スモイト王の身代わりになって幽霊を演じるところは、1902年にArgosy誌にAn Amateur Ghostというタイトルで発表されている。この二つの話を長篇版ジャーゲンにとりこんだわけだ。こちらもpdfで読める。 Argosyリンク先

これらの資料については、James Branch Cabell : An Illustrated Bibliography で読める。

アレイスター・クロウリー

アレイスター・クロウリーというと魔術の人だが、『ジャーゲン』にはクロウリーの影響の色濃い章がある。第22章はコカイン国にやって来たジャーゲンがアナイティスとヴェールを破る儀式を執り行って結婚するのだが、この儀式がクロウリーの魔術の儀式をなぞっているのである。その儀式は『魔術 理論と実践』(国書刊行会)で読むことができる。

O・T・O 〈第十五の書〉「グノーシスのミサの書」の中の「IV〈ヴェール〉を開ける儀式について」である。

たまたまRalph Tegtmeierという人の書いたクロウリーの評伝Aleister Crowley, Die tausend Masken des Meisters (Knaur, 1989) を手に入れて、ページを捲ってみたら、クロウリーが好んで読み影響を受けた作家や作品を紹介するところに、SFや幻想怪奇小説の作家作品が並んでいて、「特にクロウリーが高く評価していたのが、アメリカの作家ジェイムズ・ブランチ・キャベルだった。反社会的内容を含む《マニュエル伝》に属する『ジャーゲン 正義の喜劇』のある章では、クロウリーの「グノーシスのミサの書」に出てくる儀式が描かれているせいもあった」というようなことが記されていて、それはこの章のことを指しているわけである。

《マニュエル伝》インデックス

前に『ジャーゲン註釈集』があるという話をしたが、今日は《マニュエル伝》全体の註釈集である。これもずいぶん参照した。

私の手元にあるのは1977年にマイクロフィルムから複製されたもの。タイプ打ちの原稿をコピーして製本したという感じの造り、もともとは1954年の本のようである。『イヴのことを少し』を訳す垂野創一郎さんが持っている本書の様子は「プヒプヒ日記」で見ることができるが、その姿は私の手元のものとまったく違う。あっちの方がよさそうだな。『土の人形ひとがた』を訳す安野玲さんが持っているのも、きっとこれだ。

まあ、私はこれでいいけど。

タイトルは、A Glossarial Index to the “Biography of the Life of Manuel”で著者はJulius Lawrence Rothman。この著者の学位論文の一部らしい。

ジャーゲン註釈本

Jurgenには古今東西の神話や民話から夥しい数の人物名地名等が借用されている。あるいは、場面すらも。それを全部拾ってやろうという気持ちを抱きそうになるのは当然だと思うが、それで本を作ってしまった人たちがいる。ここに紹介するのはその一冊(ということは一冊だけではないのだ)である、1928年にニューヨークのRobert M. McBride社から刊行されたNotes on Jurgenである。著者はJames P. Cover。100ページほどしかない短い本だが、とにかく『ジャーゲン』の註釈しかないのである。これがなかったら翻訳は難しかっただろう。このオンライン版が去年まではあったのだが、今はもうない。保存しておけばよかったと後悔している。翌年にはNotes on Figures of Earthも刊行された。この出版社は《マニュエル伝》を多数出版している会社でもある。